兵庫縦断トレイル(創立50周年記念事業)

1.計画の発端

2015 年の5 月ごろだっただろうか、来年は当会の創立50周年にあたるので、どのような記念行事をするか検討してほしいという会長(当時)の話が運営委員会で出たことが発端である。丁度その年の6 月に尾瀬の燧ヶ岳に水芭蕉の鑑賞も兼ねて出かけた。長蔵小屋での雑談のなかで、会員全員が参加できて、しかも記録としてもある程度価値のあるような山行が計画できないだろうかという話が出た。その中で兵庫縦断のアイディアが出てきたのである。


2.計画の基本方針
委員会ではまず基本方針を以下のように定めた。
(1)兵庫県は日本海と太平洋(瀬戸内海)にまたがる本州唯一の県であり、この特色を生かして日本海から瀬戸内海まで出来るだけ車道を通らず、山をつないで歩くトレールを開拓する。そのため、登山道の無いところは藪尾根もいとわない。
(2)全体を約10 区間に分けて出来るところから順次実施して最終的に一本のトレールを作る。初心者や高齢者も参加できる簡単な区間や山中泊を伴うやや厳しいものまで、多様なコースとする。
(3)記念行事なので出来るだけ多くの会員が参加し、全員で作り上げたトレールとなることを目指す。具体的には兵庫県の誇る名登山家の加藤文太郎の生地である日本海に面した浜坂から姫路の小赤壁公園までとし、途中には兵庫県の最高峰である氷ノ山や日本分水嶺を含むコースとすることとした。

 

3.コースの選定
まず兵庫県全図で大まかなルートを決め、更に5 万分の1の地形図でルートの概要を決めた。ただ地形図は古いものも多く、電子版の2 万5千分の1や、インターネットの情報、各地の観光協会、役場の観光課、森林管理所等々へ問い合わせて情報を集めた。一番の問題は大半の場所はガイドブックがないので、所要時間が判らないことである。林道の場合は距離さえ判ればほぼ予測は着くし、登山道が整備されておれば、ある程度の予測はつくが、藪尾根の場合は藪の酷さの程度によって全く時間が異なるし、また道を間違えることはある程度避けられないので、そうしたロスタイムをどう見込むかという問題がある。さらに、北部の区間では登山口までのアクセスに時間がかかるので、日帰りは無理で宿泊は避けられないが、適当な宿泊場所がるかとか、そもそもアクセス自体が非常に不便でバスが期待できないとか、タクシーを使うにしても駅からの行きは良くても、帰りは携帯が通じないところも多く、駅から呼ぶのも大変等、とにかく計画の立案が大きな課題であった。全員で情報を集め、計画するということはやり始めてみると、結構楽しいものであった。登り口が判らない場所は事前に偵察に出かけた。


4.山行の記録
以下に山行の記録をまとめる。(第1区間のみ2015 年、第2区間以降は2016年に実施)


第1区間 11 月21 日~22 日(1 泊2 日 民宿泊)
浜坂の矢城ヶ鼻灯台—千々見山—池ノ尾林道—牛ヶ峰山—鳥越峠—海上 16 名


第2区間 6 月10 日~12 日(2 泊3 日 避難小屋泊)
海上—上山高原—扇ノ山—東因幡林道—赤倉山—氷ノ山—分水嶺尾根—若杉峠 8 名


第3区間【その1】5 月14 日~16 日(2 泊3 日 民宿泊)
若杉峠—藤無山—冨土野峠—笠杉峠 4名


第3区間【その2】7 月6 日(日帰り)
笠杉峠—段ヶ峰—千町峠—川上 3 名


第4・5区間 4 月23 日~24 日(1 泊2 日 ホテル泊)
川上—砥峰高原—峰山高原—雪彦山 5 名


第6区間【その1順コース】5 月4 日(日帰り)
雪彦山—南尾根—小畑トンネル 4 名


第6区間【その1逆コース】4 月9 日(日帰り)
小畑トンネル-雪彦山 8 名


第6区間【その2】7 月16 日(日帰り)
小畑トンネル-明神山—岡村 4 名


第7区間 2 月27 日(日帰り)
岡村—夢前川東岸連山—置塩城—宮置 5 名


第8区間【その1】6 月18 日(日帰り)
宮置—鞍掛山—清水橋—玉田 6 名


第8区間【その2】9 月25 日(日帰り)
玉田—増位山—姫路駅 11 名


第9区間 10 月9 日(日帰り)
姫路駅—仁寿山—小赤壁公園 27 名


5.まとめ
山行回数12回 山行延日数18日 山行参加者延べ137人・日 参加者38人。
コースの48%がバリエーション。車道は7%。第8の2、9区間を除くとバリエーションが53%、車道は4%(所要時間比)と所要時間の半分以上は道が無いトレールである。会の総力をあげて、こうしたプロジェクトを完成することができたことは、大きな成果であった。このトレールには登山に要求される様々な要素が含まれており、また人の手の入っていない素晴らしい自然を堪能することできる。特に北部のブナをはじめとする豊かな自然林は特筆に値すると思う。今後も様々な形でこのトレールが活用されることを期待したい。